月岡温泉です。
新潟県新発田市。「しばた」と言っても、あの背番号「7」のあの柴田ではなく、新しく発展する田んぼと書く、新発田です。
江戸時代、新発田藩6万石の城下町として栄えていました。城下の人々は藩主によって開削された新発田川や清水園入口にあった井戸など4カ所あった公共の移動を飲み水としていたのです。
水とともに雪深い越後の人々の日常生活に不可欠であったのが、燃料としての薪です。城下では、薪を乗せ、会津領や黒川領の村から安治川、新発田川の整理を利用して運ばれる丸木に頼ってきました。
それは春雪の頃、山から刈り出して、秋に川流していたのです。また、新潟といえば国内有数の石油の採掘地として知られています。石油の採掘は、新発田の家に思わぬ副産物をもたらしました。
新発田駅からタクシーでおよそ20分。小高い山に囲まれた盆地の上に開けた田園風景。その中に、宿が密集した温泉街が忽然と現れました。月岡温泉です。
のどかな田園風景の中にある月岡温泉が生まれたのは、大正時代のことでした。石油の掘削のための井戸から石油ではなく、温泉が吹き出したのです。地中深く石油層の下から湧き出したのは、温泉でした。
ここのお湯は、特別なものでした。金属を真っ黒くするその温泉は、国内随一の成分含有量を誇る硫黄泉によって、エメラルドグリーンや乳白色などに変化するなど7つの顔があると言われており、季節やその日の気象条件によって、微妙に色が変わるのだそうです。
入浴剤と勘違いされるほど美しい温泉は、美肌の湯としても国内トップクラス肌がツルツルに若返り、また体が芯から温まって長時間にわたることから、美人の湯、不老長寿の湯として知られているのです。
まだ人は少ないね。まあこれからなんだろうけど、みんな様子見てるんだろうね。
さっきまでので風景が嘘のような宿が密集する温泉街をゆっくり進むタクシーの運転士さんがつぶやきました。いつも、この辺りの駐車場は車や観光バスで埋まっているのでそうです。
昔は、温泉街の入り口に動物園もあったんですよ。月岡ヘルスセンターとかね。どうやら高度経済成長期の頃の話のようです。
宿の玄関前に着き、タクシーを降りると着物姿の女将さんと一緒に、夕焼けの空を飛び交うツバメの声が出迎えてくれました。
今日はお世話になります。
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